「障害者が恋愛感情を持つことについて」
                                          
                                      県福祉教育・ボランティア学習推進員
安藤謙一

1.安藤氏のプロフィール

自分の障害と今までの生活について

脳性小児マヒアテトウゼ型(首が安定しなく、左手しかきかず字も書けない、話すことも困難)→9ヶ月の早産のため未熟児と黄疸症状が強かったため

 9年前の福祉施設のバザーの女性ボランティアに恋愛感情を抱き、その女性を描くようになったのがきっかけ。

2.先天性重度障害者が恋愛感情を持つことの社会的現状

福祉教育の学習目標の一つに「障害理解」(ノーマライゼーション、バリアフリーについて考える)がある。ただ、障害者にとってタブー視されている“恋愛・結婚”について考え合うことなくして、真の障害理解にはつながらないのではないか。なぜなら、“恋愛”とは、障害のあるなしにかかわらず人間として必然的におこる心のはたらきだからである。そして、生活をより豊かにすることができるのが恋愛だからである。

(1)社会的な良い点

(2)安藤氏自身にとって良い点

  1. 社会的な問題

   ・好意を寄せられたボランティアが障害者たからという同情心から、優しく接し、なかなか本心を伝える事はしない。→障害者はボランティアから  好意を寄せられていると誤解する。それに付随して周囲の人々は、ボランティアが好意があるような噂を流してしまう。

障害者は好意を寄せたボランティアへ本心を伝えて意思を確認しようとする。→ボランティアは障害者に「心に傷をつけたくない」という思いから 曖昧な事を発言をしたり行動をする。障害者は社会的な状況や問題点を認識しているため、ボランティアへ発言した事の責任をとろうとする。 →周囲の人々や、ボランティアは、障害者が発言した事を軽く受け取り事実を伝えず長期間、放置してしまう。

なぜこのような問題がおこるのか?

(2)安藤氏自身の問題 (今後恋愛して結婚に至った場合) 83.775円+重度心身障害者在宅手当て5.000円=合計88.775円のみ)
  1. 一般的なハンディキャップ
  1. 安藤氏自身のハンディキャップ

「おまえは人のやっかいになるのだから結婚なんか考えるでのない。それより一人で生きて行くことを考えて、将来は入所施設で暮せばいい」という。→思春期の頃から母にはなるべくこのような話題にふれないように仕向けられてきた。

この発表を通じて、受講者に考えてほしいこと。

「本当のバリアフリー・ノーマライゼーション社会って何でしょうか?」

以上お話したように、障害者が恋愛感情を持つことについては、社会全体にとって、また障害者自身にとって良い点も問題点も様々あります。ただ、障害者もみなさんと同じように、恋愛をする権利・そして自己責任があるのです。この問題に対しての社会的差別や、障害者自身が克服しなくてはいけないことを解決するには、この恋愛問題を特別視するのではなく、みんながともに生活していける社会を築いていけば、必然的にわれわれの生活問題の一部として解決されるのではないでしょうか。

ただ、今回の研修では、障害問題の根底には、この問題が横たわっていることを、福祉教育を地域で進めていくみなさんには認識していただきたかったので、あえて取り上げました。

ともに生きる社会作りのためには、まず福祉教育が必要だと思います。住民の理解促進はもとより、障害者自身もみなさんと一緒に学習する機会が欠如しているのが現実です。障害者も住民も一緒に勉強し、お互い理解しあえる場が、まずこのふくしのまちづくりへの第一歩だと考えます。


 次へ